3月の初め、庭のヒマラヤ杉に、シジュウカラの夫婦が巣を作り始めた。
シジュウカラの子育てが間近でみられるなぁ…と楽しみにしていたが、巣が完成した途端、夫婦はぱったり来なくなった。
しっかりした巣に見えるけど、どうしてだろう…。
しばらくして理由が判明した。
隣接する街路樹に、カラスが巣を作ったのだ。
カラスの巣に見下ろされる場所は、シジュウカラには危険極まりない。
どんな場所でも、100%安全とは言えないけれど、わざわざ天敵のご近所で、子育てはしたくないわな。
せっかく作った一戸建てだけど、放棄するのも頷ける。
ほどなくして、カラスの巣には、親鳥が常駐するようになった。
巣からはみ出した尾羽が、時々動く。
抱卵が始まったようだ。
メタセコイアもまだ芽吹き前で、巣は我が家の二階の窓から丸見えだった。
鶏の抱卵は21日だけど、カラスはどのくらいなんだろう…。
ちなみにカラスの卵は、薄いブルーグリーンに、ウズラの卵のような斑点がある。
意外にラブリーな外見だそうだ。
やがて、じっと座っていた親鳥が、巣を離れるようになる。
卵が孵って、子育てが始まったのだろう。
今年の春は、とにかく暑かった。
5月なのに30度を超えたりして、子育ては大変だったと思う。
食べ物はいいとして、水分はどうしていたのか。
脱水や熱中症にならなかっただろうか。
親ってものは、人間でもカラスでも、大変な役目だ。
夫はまだ子どもだった頃、巣立ちしたばかりで、うまく飛べないカラスの子を、追いかけたことがあるそうだ。
カラスの子は、バタバタもがきながら飛んで、畑の真ん中に着地した。
そこへ親鳥がやってきて、羽を広げて、子ガラスを守るような仕草をした。
ちょうど雨も降っていて、雨から子を守ったのか、人から守ったのか…。
夫の人でなし加減は、まあ、子どもだったので目をつぶるとして、親カラスの健気さには、ホロリとする。
そして今朝、カーテンを開けたら、そぼ降る雨の中、巣の中でしきりにバタバタ羽を動かす子ガラスが見えた。
親2羽は、巣に来て、また飛び立って、遠くで鳴いて、しきりに子ガラスを促している。
ああ、巣立ちの朝が来たんだ。
だけど子ガラスは、怖いのか、なかなか飛ぼうとしない。
無理もない。
これが子ガラスにとって、初めての決断、初めてのバンジージャンプだ。
手に汗握って、頑張れ!…と夫と二人、応援してしまった。
我が家にも、巣立ちしたような、してないような子どもが二人いる。
だから、人様(カラス様)のご家庭の巣立ちも気になってしまうのか…。
子ガラスは2羽。
飛びそうで、飛ばない。
ずっと見ていたかったけれど、出勤が迫り、時間切れ。
頑張れよ…と後ろ髪引かれながら、現場を後にした。
さて、帰宅した時、巣に子ガラスは、いるのか、いないのか。
どっちだろう。
〈追記〉
6月8日 15時 2羽は巣の端にとまったまま。今日は巣立ちしないらしい。
6月9日 7時 盛んに羽ばたくが、飛ばない。親は近くの屋根にいる。
6月9日 10時 巣にいない…と思ったら、1メートルほど上の枝に。飛ぶというより、枝から枝へジャンプして上ったもよう。カラスのくせにチキンだ。
6月9日 17時 1羽は、さらに1メートル上方の枝に移動。もう1羽は巣にいるようだ。親鳥が木の周りを飛んでいる。本日の巣立ちもなさそう。
6月10日 6時半 どうも1羽は飛んだようで、姿が見えない。もう1羽は、巣の中で、呑気に羽繕い中。親鳥が、周囲を飛んでいる。きっと「はよせんかい!」と思っているはず。
6月10日 18時半 2羽が巣の中にいる。夕方になって飛び立った1羽が戻ってきたようだ。慣れ親しんだ我が家で眠りたいのは、誰しも同じ。夫が「くーちゃん、おやすみ」と挨拶。いつの間にそんな名前が…。
6月11日 7時 1羽は不在、もう1羽は巣の縁に。夜は一緒に巣で寝たようだ。見分けがつかない2羽なので、片っぽだけが外に出ているのか、交互に出ているのかは不明。
6月11日 18時半 薄暗いのではっきりしないが、巣には誰もいないもよう。
6月12日 7時 巣は空っぽ。巣立ち完了。…と思ったら、1羽がぴょこんと顔を出した。なんだ巣の中に丸まってたのか。
6月12日 13時 誰もいないように見えるが…。
6月12日 19時 1羽は巣の中、もう1羽は巣から少し上の枝にいるやんけ。ずっと見張っているわけではないので確証はないが、たぶん、くーちゃん1号は、昼間は外を飛び回り、夜だけ2号のそばに帰ってくる。2号はまだ飛んでないのかも。
6月13日 6時半 くーちゃん2号は巣にいるようだ。1号の姿ない。さすが鳥、朝が早い。親鳥の姿はない。もう勝手にせーよと、行ってしまったのかもしれない。
6月14日 5時半 ものすごい鳴き声で目が覚める。なにが起こったのか…と慌ててカーテンを開けたが、その時は騒ぎは収まっていて、何が起こったのかは謎。トンビにでも襲われたのか。心配。
6月14日 13時 1羽だけ巣にいることを確認。無事だったらしい。
6月15日 朝陽に向かって堂々と胸を張っているが、空威張りしてないで、そろそろ飛んでみたら?
6月16日 朝からすごい雨。巣の中でもごもご動く影。びしょ濡れだろうに。
6月17日 19時 1羽のみポツンと巣にとまっている。孤高のカラス。堂々とした姿が逆に哀れ。近くの民家の屋根に2羽、別のメタセコイアに1羽確認できる。遠巻きに見守っているのか。
6月18日 朝陽がまぶしくて巣を直視できないが、カラスの姿は確認できない。もしかして…?