映画【風と共に去りぬ】スカーレットは自分を知らなすぎると思う

今更説明の必要もない名作中の名作。

…だけど、案外、若い世代は知らないのかもしれないなぁ。

風と共に去りぬは、マーガレット・ミッチェルの小説の映画化。

舞台は1861年のアメリカ、ジョージア州。

綿のプランテーションが広がる豊かな赤い大地タラ。

黒人奴隷解放を掲げる北軍との戦争が目前に迫り、南部の豊かな時代は風前の灯火だった。

大農場の娘、スカーレット・オハラは、その美貌と奔放な性格を武器に、社交界の人気を独り占めしていた。

だが大勢の男に囲まれながら、彼女が欲しかったのは、たった一人アシュレーの心。

そのアシュレーは、スカーレットと正反対の聖母のようなメラニーとの婚約を発表する。

失意のスカーレットは、やけくそで違う男のプロポーズを受け入れるが、彼はあっけなく病死。

若くして未亡人となったスカーレットは、暇を持て余して、アトランタへ出てくる。

そこで強引に近づいてくるバトラー船長と再会するが…。

長い話なので、あとは原作を読むか、映画を見るかしてくださいませ。

風と共に去りぬ

この映画は、今年で最後となる午前10時の映画祭に含まれている。

大画面で風と共に去りぬを観る機会は、もうないかもしれない…と思ったら、いてもたってもいられなかったが、なにせ3時間58分もある大作だ。

半日しか休みがとれない身では、行けない…。

…と諦めかけたが、もう何度も観ていて、ストーリーも熟知している。

途中まででもいいじゃないかと割り切って、映画館に出向いた。

ガラガラかと思いきや、朝から30人ほどの観客。

その全員が、私より年上(^^ゞ

…みんな、若かりし頃に観た映画が懐かしいのだろう、気持ちはよ~~~~く分かる。

風と共に去りぬ

私にとっても、特別な映画だ。

中学2年の時、父が病死した。

葬儀が終わって数日後、私は近所の知人の家に泊まらせてもらっていた。(葬儀後のバタバタでゆっくり眠れる環境ではなかった)

ちょうど中間テスト期間中だったが、勉強する気にはなれなかった。

なんとなくテレビをつけたら、金曜ロードショーで風と共に去りぬの前篇を放映している。

原作を読み終わったところだったので、いいタイミングだった。

華やかなアメリカ南部の園遊会の場面。

悲しみと不安に押しつぶされそうな自分の現実とは、全然違う、夢のような世界だ。

食い入るように見ていたはずが…、いつの間に眠ってしまった。

映画に没頭し、その時だけでも現実を忘れたかった、やるせない想いが、タラのテーマ曲とともによみがえってきた。

風と共に去りぬ

風と共に去りぬは、1939年の作品。

なんと第二次世界大戦の前、私の母が生まれた頃に制作された。

だが古い映画だからといって、バカにすることなかれ。

CGも特殊効果もなかった時代の映画とは思えないほど、完成度が高い。

南軍が敗退し、アトランタ駅前が負傷兵で埋め尽くされた場面は、あれだけの人数のエキストラを実際に動員して撮影したはず。

なんともすごいエネルギーだ。

風と共に去りぬ

主人公スカーレットは、原作通りではあるけれど、あの時代、ここまで自己主張の強い女性は、特異な存在だったと思う。

アメリカは、基本的にキリスト教の国だ。

聖書には、女性は男性に従うように…と明記されている。

だからメラニーのような愛に溢れ、母性に満ちた女性が、あるべき女性の姿だった。

そう、大草原の小さな家の、ローラのお母さんみたいなイメージ。

だがスカーレットは違う。

自分から愛の告白をし、淑女のふるまいを無視し、燃え盛る炎をくぐり抜け、家を守るために侵入してきた兵士を撃ち、餓える一家の面倒をみて、商才を発揮し、自分の馬車を持ち(女性が馬車を持つのはタブーだったらしい)、もちろん夫たちの言いなりにはならない。

当時、禁止だらけの中で生きていたアメリカの女性たちは、この映画を観て、何を思ったのだろう。

そして戦後の復興と続く経済成長期に、この映画を観た当時の日本人は、何を思ったのだろう。

風と共に去りぬ

「私は神に誓う。もう二度と、ひもじい思いはしないと!」と拳を握りしめるシーン。

男性の庇護の元ではなく、自分で人生を切り開こうとするスカーレットの…、いや人間の力強さ。

ただし、自由を象徴しているような彼女だが、内観が足りないと私は思う。

本当の自分の望み、本当の自分の気持ち、本当の自分の幸せ…を知ろうとしない。

いつも意地を張りすぎて、大切な機会を逃してしまう。

バトラー船長のような粗野な男を愛している…なんて、プライドが許さなかったのか。

でも、外側ではなく、少しでも内側を見ることができたなら…。

どんなに美しい宝物が自分の手の中にあるのか、気づくことができたのに。

まあ、それも年を重ねた今の私だから言えることもしれないけれどね。

風と共に去りぬ

午後のシフトが入っていたので、スカーレットが2番目の夫フランクの店の前で、レット・バトラーと再会する場面で映画館を出た。

後ろ髪引かれる想いではあったけれど、大画面で懐かしの映画をまた観ることができて、嬉しかったことは間違いない。

午前10時の映画祭、風と共に去りぬを選ぶなんて、グッジョブ!

 

この記事を書いた人

Chikako

金沢市在住。バラとコーヒーとコーギーが好き。
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