10月に入って、話題作が目白押し。
マスカレードナイトとか、護られなかった者たちへとか、総理の夫とか。
もちろん全部観るつもりだけれど、その日私は迷わずマイ・ダディのチケットを買った。
地味なキャスティング。
制作費が低そう。
あまり話題にもなってない。
だけどこれが観たいと思った。
映画【マイ・ダディ】のストーリー
小さな教会の牧師、御堂一男(ムロツヨシ)は妻亡き後、娘のひかり(中田乃愛)を男手ひとつで育てている。
思春期の娘にうざがられながらも、毎日が忙しくて,楽しくて、満たされていた。
ところがある日、礼拝堂でひかりが倒れてしまう。
ひかりは白血病だった。
すぐに放射線治療が始まる。
神様が護ってくれるから・・・、一男に励まされ、ひかりは治療に前向きに取り組む。
いったんは元気になって退院するひかり。
友達も好きな人もいて、未来は限りなく開けているように思えた。
だが再発。
残る治療法は、骨髄移植しかない。
骨髄移植の大きなハードルは、移植の適合者を見つけることだ。
父親である一男が適合する可能性は高い。
検査の結果、一男とひかりに血縁関係がないことが判明する。
それはどういうこと?
妻が他の男と?
一男は妻を愛していたし、信じてもいた。
いきなり突きつけられた受け入れがたい現実に、心は千々に乱れる。
闘病中のひかりの前では、悶々とした苦しみを押し隠し、笑顔を絶やさない一男。
時間は刻々と過ぎるが、移植の適合者は見つからない。
やけになる娘と焦りに駆られる父親。
これまで神様を信じ、神様に祈り、神様を伝えてきた。
それなのに神様は、どうしてこんな試練を与えるのだろう。
そこで思い当たるひとつの可能性。
ひかりの本当の父親なら、適合するのではないか。
恥も外聞もない。
ひかりを助けるためなら、なんでもする。
一男は私立探偵(小栗旬)に、父親探しを依頼する。
父親は見つかった。
だが彼はひかりの存在すら知らなかった。
おまけに今の家庭を壊すようなことはしたくないと言う。
ひかりにはもう後がない。
追い詰められた一男は・・・。
ムロツヨシ初の主演映画
ムロツヨシは、シリアスからコメディまで幅広くこなす役者さんだ。
NHKのLIFEでその存在を知り、面白い人だなぁ・・・と注目してきた。
俳優歴25年というから、下積み時代が長かったようだ。
お世辞にもイケメンとは言えないが(ごめんな)、くったくのない笑顔やコミカルさが人の心を掴む。
ブレイクしてからは、CMにも引っ張りだこ。
つい先日は、番組の企画で自衛隊の戦闘機に乗るチャレンジをしていた。
民間機の遙か上、宇宙に近い高度からのレポートは、素晴らしかった。(いや、ムロさんというより、パイロットが?😅)
そんなムロが、台本を読んだ瞬間に、「この世界にいたい!一男になりたい」と出演を即決したのが本作。
イクメンやお人好しの役回りが多いムロが、血の繋がらない娘を全力で愛する父親の、もうそこれこそ人の限界を超えた愛の表現に挑む。
神を愛する男が、ナイフを握って人を脅す・・・?
愛ゆえに。
いつもニコニコしている牧師の役ではあるが、妻を疑ったり、諦めたり、蹴られても殴られてもすがりついたり、葛藤に耐えきれずむせび泣いたり・・・、その迫真の心理描写にぐいぐい引き込まれる。
Chikakoの感想
私が知っている役者さんは、ムロツヨシと小栗旬とかろうじて臼田あさ美と光石研。(あまり芸能界に詳しくない)
小栗旬は友情出演か?・・・というくらいのちょい役だし、ひかりを演じた中田乃愛も今回初めて知った。
でもそんなことは全然気にならない、よい映画だった。
優しさや愛を描いた作品は、心が満たされる。
きっとそれはみんな同じなんだろうと思う。
そこここでティッシュを引っ張り出す音と、鼻をすする音がしていたから。
夫を裏切った立場にある妻だが、彼女には彼女の事情と想いと愛があった。
疑おうと思えば、どこまでも疑える。
事情を説明しようにも、本人はすでにいない。
決めるのは一男なのだ。
妻の誠を信じるのか、信じないのか。
お母さんは、お父さんを愛していたよ!
娘の命をかけた叫びが胸に刺さる。
前半、二つのストーリーが並行して進むが、その落としどころがなんともニクい。
中田乃愛は透明感があって、とてもフレッシュ。今後が楽しみな女優さんだ。
ひとつ難癖をつけるとしたら、マイ・ダディというタイトル。
ダディには違いないが、映画のテーマと少しずれている感じがする。
私だったら、どんなタイトルにするかな。・・・ちょっと考えてみよう。(←誰得?)