三浦春馬主演 天外者(てんがらもん)

天外者(てんがらもん)とは、鹿児島の言葉で、いい子とか功績を挙げた者とか天からの子という意味がある。

映画【天外者】は、五代友厚の生涯を描いている。

五代友厚は、商いの町大阪の基盤を築き、東の渋沢栄一、西の五代友厚と評されるほどの功績を挙げた。

「名もいらぬ、実もいらぬ、ただ未来のために」と高い理想を掲げて、幕末から明治の激動の時代を駆け抜けた人物。

天外者のあらすじ

五代友厚(三浦春馬)は鹿児島に生まれ、薩摩藩の藩士だった。

だが時は幕末、ペリー来航により、武士の世は終わりに近づいていた。

新しい時代が来る!

若き五代は、持ち前の嗅覚でいち早く、日本の外の世界に目を向ける。

変化を嫌う父、兄、同僚たちの反対をものともせず、外国の技術を学び、交流や貿易をしたいと焦りにも似た想いに突き動かされる。

やがて志を同じくする同年代の友に出逢い、当時はまだ珍しかったすき焼をつつきながら、日本の未来を熱く語り合う。

坂本龍馬(三浦翔平)、伊藤博文(森永悠希)、岩崎弥太郎(西川貴教)、と五代友厚。

若くして世を去る龍馬以外は、それぞれ明治の日本を牽引する人物となる。

五代友厚は、長崎の武器商人、トーマス・グラバー(ロバート・アンダーソン)の援助を得て、イギリス視察に赴く。

当時の渡航は、途方もない旅費がかかり、政府や藩の派遣でなければ、なかなか実現しなかった。

だがグラバーは、五代の「誰もが自由な夢を見られる国」を作りたいという情熱に、半ばほだされた形で渡航費を提供する。

蒸気機関車、自動車、機械化された紡績工場。

産業革命を経て、工業化の道を突き進むイギリスで得た見識を、日本へ持ち帰る五代。

最初は政府の役人となるが、やがて民間で事業を興し、貨幣造幣、電信、鉄道、紡績、鉱山など様々な事業を展開する。

現在の大阪証券取引所、大阪商工会議所、大阪市立大学など、多くの企業や組織の設立に関わった。

あまり知られていないように思うが、五代友厚は明治の経済基盤を築いた立役者なのだ。

いつの時代も、人は変わりたくない

五代がワクワクしながら新しい世に目を向ける一方で、彼は龍馬とともに命を狙われる。

大きな歴史のうねりの中で、ずっと同じで居続けるのは不可能なのに、変化を嫌う人々は、五代を裏切り者呼ばわりし、斬ろうとする。

幕末も令和も、大差はない。

人は変わるということに対して、拒否反応を示す。

おそらくそれは未知なるものへの恐れからくるのだろう。

遊女が字を学ぼうとすると、嗤われ、馬鹿にされる。

そんな世の中に絶望していたとしても、変わるくらいなら、今のままがよい・・・と。

まだ見たこともない新しいものは、怖いから。

新しいことや物や時代に恐れを感じる人と、希望を見いだす人。

ぶつかり合う価値観。

だがどんなに否定されようとも、五代の「男も女も誰もが等しく夢をみることができる国」への情熱は消えることはなかった。

夢を語り合う若者の美しさ

船のマストによじ登り、五代と龍馬が朝陽を浴びながら、「おまんとわしとで、日本を変えてみせるぜよ!」と語り合うシーンは、もうなんか美しすぎて言葉にならない。

若者が希望に向かう姿は、なんと麗しいことか。

こんなにも熱い想いを、私たちは抱いたことがあるだろうか。

無限の未来が開けている、その懐に飛び込んでいこうとうする突き上げるようなエネルギー。

私たちはみんな、スマートに生きる術に慣らされて、そんな熱さを遠い昔に置き去りにしてきてしまったのではないか。

人が未来や希望を語ることは、こんなにも美しいのに、勇気を持って未来へ向かう人たち、変化を連れてくる人たちを、バッシングする今の社会。

なにかと揚げ足を取って、ネットで叩いたり、否定したりして、応援どころか引きずり下ろそうとする。

それが龍馬と五代を執拗に襲う武士たちの姿と重なって見える。

夢や希望を語り行動に移す者は、やがては未来を創る者。

せめて邪魔をしない社会、分からなくても理解しようと努力できる私たちでありたい。

外国人でありながら、五代の才能と情熱を認め、自国の利益にならないと周囲に意見されても、五代の渡航を支援したグラバー氏。

自分はもう本国には帰らない。この国の行く末を見極めたい・・・と、日本人以上に日本に肩入れしていたようだ。

そのグラバー氏の邸宅が、今も長崎に残っており、観光名所になっている。

近いうちに、絶対訪ねようと心に決めた。

旧グラバー邸
(グラバー園公式HPより)

三浦春馬の遺作

三浦春馬は、いい俳優だと思う。

ブラッディマンデーの頃から注目しているが、感情表現がとてもうまい。

目だけで物を言う。

五代を斬ろうと実家に押しかけてきた薩摩藩士の前で、髷を切り落とした時の目つきは、震え上がるようなすごみを帯びていた。

分かってもらえない悲しみと母への罪悪感、でも抑えきれない新しい世への情熱が、混ざり合った目だった。

これから年を経るにつれて、どんどん深みが増し、佐藤浩市や役所広司のような存在感のある役者になるはずだったのに・・・と思うと、残念で仕方がない。

天外者公式サイト

この記事を書いた人

Chikako

Chikako

金沢市在住。バラとコーヒーとコーギーが好き。
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