ハワイアン航空の機内上映ラインナップに、2019年9月封切の「記憶にございません!」を見つけた。
予告編を観た時から注目していたのに、見逃してしまった映画。
やっぱりとても面白かった。映画館で見たかったなぁ。
記憶にございません!のストーリー
病院で目覚めたら、自分が誰だが忘れていた!
混乱してパジャマのまま病院を抜け出し、牛丼屋で見たテレビ画面には、自分の顔が映っている。
え?俺?俺が第127代内閣総理大臣・黒田啓介?
自分では全く覚えていないが、黒田啓介(中井貴一)は、金に汚く、女性にだらしなく、態度も横柄で、国民から嫌われまくっている総理大臣。
記憶喪失になった原因も、国民が投げた石が頭に当たったから。
そんな史上最低最悪の総理が、全てを忘れて、普通の善良なオジチャンになっちゃった…。
記憶喪失のことを知るのは、3人の秘書官のみ。
黒田は内閣にも国会にも家族にすらも、記憶がないことを隠して、総理大臣の職務に当たる。
だが閣僚の顔や本会議場の場所はおろか、息子の名前すら憶えていないのだ。
頼りは秘書官の井坂(ディーン・フジオカ)と番場(小池栄子)のみ。
有能な秘書官の公私にわたるサポートが冴えまくる。
(ディーン・フジオカ、かっこいい…。)
番場にいたっては、総理夫人・聡子(石田ゆりこ)のドタキャンの穴埋めで、フラメンコ(らしきもの)まで踊っちゃうのだ。
小池栄子はすごく踊れる人なのに、真顔でなんちゃってダンスを披露。
話そのものもコメディだが、役者もまたコメディの実力を兼ね備えている。
一方黒田は、憶えていない案件で週刊誌の記者(佐藤浩市)にゆすられたり、憶えていない愛人に迫られたりするが、自分でもなんのことやらチンプンカンプンで、訳が分からない。
おまけにそんな大変な時に、アメリカから初の女性大統領(木村佳乃)がやってくる。
記憶をなくしたまま、総理と秘書官は、この難局を乗り切れるのか?
記憶喪失、そして…
前半のドタバタ劇だけでも、相当おかしいのだが、これだけで終わってしまったら、ただの喜劇だ。
だが国民に嫌われた総理・黒田啓介は、記憶がないことを逆手にとって、生まれ変わろうとする。
よき父親、よき夫、よき総理として。
国民のための政治をしようと、小学校の恩師を公邸に招き、一から政治の勉強を始める。
そう、三権分立から。
国会に陳情にくる人たちに優しい言葉をかけたり、転んだ女性記者を助け起こしたり、家族で食事に出かけたり、SPに食事を振る舞ったり。
これまでの総理では考えられないことばかりだ。
やがて総理のことをお荷物だと考えていた秘書官も、新生黒田の真摯さに触れ、一緒にこの国を、政治を変えていこうと、熱い想いを共有する。
そこに立ちはだかるのが、鶴丸大吾官房長官(草刈正雄)。
国民に寄り添わない政治をなんとも思っていない。
彼の政治家としての目標は、1日でも長く国会議員でいること。
そして権力を手放さないこと。
政治について改めて学び、あるべき政治・総理の姿を明確にした黒田は、いつの間にか想いを共有した秘書官とともに、立ち上がる。
監督は三谷幸喜
さすがの三谷幸喜!
ドタバタ劇に続く、ハラハラした展開、そしてホロリとさせ、最後にもうひとつどんでん返し。
エンターテイメントはこうあるべき…と、作品が語りかけてくる。
私は映画を観た後に、それがどんなジャンルであるにしろ、ああ、明日からまた頑張ろ!…と思える映画が好きだ。
心が軽くなる、希望がわく…とでも言えばいいのか。
コメディの中にも、人間の尊さがちゃんと描かれている映画。
記憶にございません!は、なんだか冴えないなぁ…と思う日に、お勧めの作品だ。
これだ~~~れだ?
記憶にございません!の登場人物。
↑ニュース番組のキャスター役の女性。だるそうにニュースを読む。
エンドロールを見ずに、誰だか分かった人、偉い!
↑秘書官役。さて、誰でしょう?
↑野党の党首(吉田羊)。モデルは誰でしょう?…ってすぐ分かる。
三谷映画は、こういう仕掛けも面白い。
天海祐希と山寺宏一の登場場面を見つけるのは、かなり難しいよ。(^^ゞ