映画【ラストマイル】

ちょっと映画でも観に行こうかと、軽いノリで選んだ映画。

なんか爆弾の映画らしい…くらいの予備知識しかなかったが、社会問題をベースにした謎解きがテンポよく運ぶ緊迫の2時間だった。

【ラストマイル】のあらすじ

大手ショッピングサイト・デイリーファスト社の関東センターに、センター長として赴任してきたばかり舟渡エレナ(満島ひかり)。

年に1度のブラックフライデーを控え、精力的に準備を進める。

ブラックフライデーとは、セールを連発するお祭りのような1週間。

だがその前日、デイリーファスト社から発送された宅配便が、顧客宅で爆発する。

事故かテロか、原因がはっきりしないまま、ブラックフライデーが始まり注文は爆増、発送業務も拍車がかかる。

しかし第2、第3の爆発が起こり、連続爆破事件と断定した警察が乗り込んできて、発送を止めろと要求する。

ラインは止められない、だが爆弾付きの荷物を送るわけにもいかない。

エレナとチームマネージャーの梨本孔(岡田将生)は、爆弾を探して奔走する。

犯人は誰なのか、警備の厳しい物流センターに、どうやって爆弾を持ち込んだのか、そしてその動機は?

エレナと梨本、警察と、配送会社、それぞれの立場と思惑が交錯する。

巨大物流システムの裏側

エレナがセンター長を務める物流センターは、高度に自動化されていて、広大な倉庫には5億点の商品が収納され、24時間、休むことなく出荷されている。

だがセンターを管理する正社員はわずか5人。あとは700名~800名のアルバイトが、伝票に従い、箱詰めを行う。

作業の進捗具合は、刻々とグラフで表示され、効率が落ちることは許されない。

人がシステムを運用しているというよりは、システムに人が使われているような錯覚さえ覚える。

近未来は、どこもこんな感じになるのだろうか。

ブラックフライデーのCМは、常に“What do you want?”と画面の向こうから、購買意欲を掻き立ててくる。

なにが欲しいの? 欲しい物は、すぐ手に入るよ? ほら、クリックして。

果てしない人の物欲が、注文数をどんどん押し上げる。

たとえ爆発の危険があったとしても、この物流を止められない…。

なんだ、これは、ブラックジョーク?

おそらく誰でもが、あの企業を思い浮かべるであろう。

海の向こうからやってきて、あっという間に日本の消費者を取り込んでしまった、あの企業。

確かに便利。確かに手軽。

忙しい現代人には、渡りに船。

だけどその便利を可能にしているのは、末端で働く名もなき配達員だったりする。

お昼休みは10分で弁当をかきこみ、大手宅配会社の下請けとして、日本の隅々まで荷物を届ける。

だが1件につき、150円の報酬って?

宅配の親会社にしても、取り引きを盾に、配送料の値引きを迫られる。ただでさえ150円しか出せないギリギリのラインだというのに。

エレナは言う。

「配送料を安く抑えれば、商品をもっと安く提供できる。結局はこれがお客様のため。

安くして儲けが減った分は、もっともっと売ればいい」

委託ドライバーの佐野(火野正平)は、俺たちが日本の物流を支えていると胸を張るが、息子は、「そんな親父を誰も大切にしていないじゃないか!」と叫ぶ。

ほんとに、これでいいの、私たち?

もっと安く、もっと早く、もっと便利にと、どこまで追求すれば、満足するの?

かくいう私も、自宅でクリックすれば、翌日には商品が手元に届くシステムの恩恵にどっぷり浴している。

今更、この便利さを手放せない。

それだけに、こんな歪みを見せつけられると、もうなんと言っていいのか……、言葉を失う。

キャスティング

エレナという名前に、英語も堪能、ハーフなのか、アメリカ育ちなのか、満島ひかりが演じるエレナは、とにかくテンポがいい。

会話も歯切れがいいし、よく動くし、初対面の梨本にもズンズン近づいてくる。

このアメリカっぽさが、心地よい。

その明るさとは裏腹に、隠している想いがあるのだが…。

(C)2024「ラストマイル」製作委員会

ちょっと冷めた青年、梨本。

前職は超ブラックな職場だったから、今はましだと言う。

いろいろできることがバレると仕事を押し付けられるからと、有能なのに、出し惜しみする。

エレナとともに奔走し、彼女の仕事への姿勢を間近に見て、なにを感じるのかな。

岡田将生くん、久しぶりに見たけど、相変わらずかっこいいね。

(C)2024「ラストマイル」製作委員会

阿部サダヲは、運送会社・羊急便の関東局局長。

爆弾捜索のため、顧客のデイリーファストからは次々と要求を繰り出され、人手不足でてんてこ舞いの現場からは責められ、いくら頼んでも本社から人員の補充はなく、あっちからもこっちからも突き上げられる、可愛そうな人。

一生懸命対応するが、最後にはもうやってらんねーーー😫と不貞腐れる。

分かる、なんとなく分かるよ、その気持ち!

(C)2024「ラストマイル」製作委員会

ディーン・フジオカは、売上と功績にしか関心がない、冷徹なデイリーファスト社日本支社の統括部長。

配送の遅れをエレナのミスだと本社に報告したり、羊急便がダメなら、他社に乗り換えろと、血も涙もない采配を振るう。

「正直不動産」といい、最近、ヒール役が多いね、似合うけど。

(C)2024「ラストマイル」製作委員会

ラストマイルには、ドラマ「アンナチュラル」と「MIU404」のキャラクターたちも登場するよ。

(C)2024「ラストマイル」製作委員会

ラストマイルとは、物流において、お客様に商品が届く最後の区間(マイル)を指すんだって。

(最後のマイルが達成されてこそ、私たちは気軽にポチッた商品を、手にすることができる)

主題歌は、米津玄師の「がらくた」。

 

この記事を書いた人

Chikako

金沢市在住。バラとコーヒーとコーギーが好き。
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