これまで司法とは無縁の日々を送ってきた私が、何の因果か、民事調停を申し立てることになりました。
相手の方が、一貫して話し合いに応じてくれないためです。
調停委員という第三者が間に入ることで、双方納得の落としどころを見つけられたらいいな…と思っていました。
たくさんの書類を用意して、仕事の合間に裁判所に出向いて手続きをし、印紙や切手も納付して、調停の日を待ちました。
調停は裁判ではないので、強制力はありません。
応じるも応じないも自由です。
相手の方が出てこない可能性もあります。
ほどなくして、裁判所から連絡がありました。
調停開催通知を受け取った相手方の代理人が、私には請求権がないことを理解していないようなので、指導してやってください…と言ってきたとか。
例の司法書士ですが、なんとも上から目線。
でも無視するわけではなさそうなので、私の請求権を証明する書類を再度提出。
そして、迎えた調停の日。
初めての経験なので、ドキドキします。
受付けに行くと、待合室に通されます。
すりガラスになっていて、外から中が見えない部屋です。
時間になって、調停室へ。
調停委員の方が男女2名。
すでに詳細な資料を出してあるので、あまり説明することはありません。
2~3質問をされてから、元の待合室に戻ります。
時間にして10分。
今度は別の待合室にいる相手方が、調停室に。
ものの5分とたたないうちに、調停委員が、慌てた様子で現れました。
相手方は、本人ではなく司法書士が1人でいらしたのですが、またもや私には請求権がないから、この調停は元々成立していないと、まくしたてたそうです。
調停委員は説得する人ではありません。
双方の話を聞いて、妥協案を引き出すのが仕事です。
話し合いになって初めて、その役割を果たすことができるのに、今回は、話し合いが始まる前の部分で、つまづいています。
「相手が応じないのであれば、私達にはどうすることもできません」
「チャンピオンがリングに上がって待っているのに、挑戦者がリングにあがってこないようなもので、試合はできません」
「調停不成立ということになりますが、よろしいですか?」
ええええええ?マジですか?
よろしいも、なにも…、ここで私に何ができるというのでしょう。
再度、調停室に行くと、相手方の司法書士と、裁判官と書記と調停委員2名が、異様な静けさなの中、待っていました。
裁判官が「調停は不成立となりました」と宣言します。
私がこれまで何度も書面を送り、その都度、とても失礼な返信をしてきた相手はどんな人なんだろう…と見ると、でっぷり太って、テカテカに日焼けしたおじちゃんでした。(多分ゴルフ焼け)
文面から、痩せて神経質そうな人を想像していたので、意外な感じがしました。
裁判官の宣言とともに立ち上がった彼は、一言も発せず、そのまま退出。
私がじっと見つめていても、目を合わせようともしませんでした。
…後ろめたい?後ろめたいよね?
話し合いになって、内容に触れれば、踏み倒そうとしていることを正当化できないものね。
だから、話し合いの前に、不成立に持ち込んだんでしょ?
こんなことのために、貴重な時間を使ってくださった調停委員と裁判官と書記さんに、私は改めて丁寧に謝意を伝えました。
あれだけの書類、読むだけでも相当な時間がかかったはず…。
それがこんな結果になるなんて。
裁判官もなにか感じるものがあったらしく、「今後、どうしますか?」と聞いてきました。
あくまでも中立の立場なので、これは珍しいことじゃないかと思います。
「請求者を連名にして、もう一度調停を申し立ててもいいでしょうか?」
「それは構いませんが、また同じことになるかもしれませんよ。」
…相手の目的が、話し合いをしないことであるなら、誰が申し立てようが、難癖をつけて、ノラリクラリとかわされるでしょう。
「再度申し立てるにせよ、裁判に訴えるにせよ、弁護士さんに相談されたらどうですか?」
「こんな些末な案件で、裁判なんか起こしてもいいんでしょうか?」
「もちろん、いいですよ。それは権利ですから。」
私は初めてでも、この方たちはこういう場面に何度も遭遇しているのでしょう、話し合いで解決できる相手じゃない…と、言外に言われた気がしました。
裁判になれば、司法書士ではなく、本人(+弁護士)が出てくることになります。
そこまでオオゴトにしたくはなかったし、食い逃げされた…と諦めることも可能な金額だけど、こんなことがまかり通ったら、契約書がただの紙切れになってしまいます。
日本の正義を一人で背負うつもりはありませんが、はてさて、どうしたものか…。