JR金沢駅、新幹線の改札前に、10人ほどの若者。
エレキギターを背負った細っこいお兄ちゃんを、ぐるっと取り囲んでいる。
ひとりずつ近寄って、ハグ。
その度に、泣いちゃうお兄ちゃん。
「頑張れよ」、「有名になれよ」と檄が飛ぶ。
ああ、なるほど。高校を卒業し、これから上京するのか。
夢はミュージシャン?
友達が見送りに来てるんだね。
新しい世界に飛び込んでいく仲間を、みんなで応援しているんだね。
春は旅立ちの季節。
ここまでドラマティックでないにしろ、こんな別れの風景があちこちで繰り広げられる。
進学や就職で旅立つ若者たち。
希望を胸に、未来へ羽ばたく・・・。
でもその前に。
立つ鳥跡を濁さず。
自分の後始末は、きっちりつけていこうね。
人生の節目で、ステージが変わる。
どうしても未来に目がいってしまうから、振り向くのは難しいかもしれない。
だけど、君をこれまで育んできてくれた場所を、ないがしろにしてはいけない。
これまでありがとう・・・、感謝をこめて、片づけよう。
君が巣立った後も、家族の暮らしは続く。
その生活の場が、君の残した不要なモノで埋め尽くされていたとしたら・・・?
以前、結婚で家を出るが、大量の漫画本は実家に置いておく・・・という若者と話したことがある。
まだ読むの?
いや、でも、もしかしたらまた読みたくなるかもしれないし。
どのくらいあるの?
1000冊以上あるかな。
持ち主が家にいなくなっても、1000冊以上の本と一緒に生活する、ご両親のこと、考えたことある?
親だからいい・・・と思っちゃうのかもしれないけれど、これが大学の研究室や友達の家でも、同じことができるかな?
自分の後始末をつけないまま、新しい生活に飛び込んでいくのは、ある意味、自分のことしか考えていないと言える。
そしてね、旅立って行く方は希望に満ちあふれてワクワクしているけれど、見送る方は、けっこう切ないんだということを知ってほしい。
でも自分たちの寂しさは押し殺して、笑顔で君を送り出す。
そんな家族の優しさに、大人へのステップを踏み出す君も、優しさで応えようじゃないか。
これまでありがとう、新天地で自分も頑張るから、元気でいてね。
・・・そんな気持ちを込めて、これまでの生活空間をきちんと片づけてから、飛び立とう。
区切りをつけたほうが、きっと君自身も気持ちがいいし、人生の流れも滞らないから。
君の未来に幸あれ。