地方にいると、バレエの舞台はなかなか見られないのだけれど、そんな私たちに強~~~い味方がいる。
それがシネマコンサート。
なんと映画館でバレエが観られるのだ。
もちろん生の舞台の臨場感にはかなわない。
だけど、生の舞台だと、豆粒ほどにしか見えないダンサーも、シネマコンサートなら、どの席に座ってもその表情まではっきり見える。
カメラがその瞬間の見せ場を、アップで撮ってくれるからね。
コーヒー飲みながら観られるのも好き。
12月にバレエと言ったら、くるみ割り人形。
クリスマスのお話だから、12月に上演されることが多い。
興業側も心得たもの、11月29日から2週間の予定で、Kバレエカンパニー(主宰:熊川哲也氏)のくるみ割り人形 in Cinemaの上映がスタートした。
クラシックバレエは、設定も振付もほぼ決まっていて、セリフもなく延々踊り続けるので、つまらないという人もいる。
だがダンサーは、やみくもに飛んだり跳ねたりしているわけではない。
そこにはちゃんとストーリーがあり、ダンサーはセリフや感情を体の動きだけで表現しているのだ。
設定やストーリーを知っているだけで、面白さは格段に変わってくる。
そしてね、お手々繋いでスキップしているだけのような単純な動きも、実はとてつもない筋力を要し、気が遠くなるほどの練習と鍛錬の賜なのだと、ぜひ知ってほしい。
舞台の端で、主役の踊りを見ている立ち姿勢ですら、筋力がなければ30秒ともたないのだ。
あまつさえ、舞台をジャンプで一周したり、32回も回転したりすることが、どれほどの技術なのか。
100メートル全力疾走を何度も繰り返すのと変わらない運動量。
それなのにダンサーは、満面の笑みをたたえている。
Kバレエカンパニーのくるみ割り人形は、独自の解釈があちこちに見受けられ、これまで曖昧に流していたことに、しっかりしたストーリーが設けられていた。
たとえば、たいして可愛くもないくるみ割り人形をもらって、なぜ少女・クララは大喜びしたのか。
それは世界一硬いくるみを割れば、魔法でネズミに変えられた姫を救えることを知ってしまったから。
ドロッセルマイヤーが、子どもたちに人形劇を見せたのは、パーティの余興ではなく、ネズミの王の悪事を劇の形で伝えるためだったなんて。
有名な金平糖の踊りは、マリー姫とくるみ割り人形のパ・ド・ドゥになっていた。
あと舞台全体や衣装の色調が抑えめで、どこかレトロがかっている。
夢の世界のほわっとした感じを、色でも表現しているようだ。
くるみ割り人形の音楽は、私たち日本人にとって馴染みが深い。
チャイコフスキー作曲のバレエ音楽として、小学校の音楽の教科書に載っているし、アラビアの踊りとかトレパックとか葦笛の踊りとか花のワルツとか、誰でも一度は聞いたことがあるはず。
軽快で妖艶で壮大な音楽は、どこか懐かしい感じさえする。
卓越した踊りに優雅な音楽、大掛かりな舞台セットに美しい衣装、バレエはまさに総合芸術だ。
美しいものを観たいなぁ…と映画館に足を運んだ私の欲求は、十二分に満たされた。
すごく幸せな気分…。
実はここだけの話、ワタクシ、くるみ割り人形に出たことがあります。パーティの客の役で。
あと花のワルツ。(初トウシューズ!)
もう7年も前のこと。でへへ…(^^ゞ