鎌倉うずまき案内所/青山美智子

本書は、平成の30年を6つに分け、5年毎にひとつの物語が展開するオムニバス。

主人公は、会社を辞めたい20代のサラリーマン、進学はせずユーチューバーになると言う息子に頭を抱える母親、好きな人にプロポーズされたのに、迷いを感じる図書室司書、仲間はずれが怖くて大切な人を傷つけてしまう中学生、40歳を目前に最後の勝負に出たい売れない脚本家、世間の常識にとらわれて『好きだ』と言わなかったことを後悔している古本屋のおじいさんと、年齢もシチュエーションもまちまちだ。

主人公たちは、ある日、鎌倉の街で不思議な空間に迷い込んでしまう。

足を踏み入れた”案内所”には、グレーのスーツを着た双子のおじいさんがいる。

名前は、外巻きさんと内巻きさん。

前髪ともみあげが、外巻きと内巻きだかららしい…(^^ゞ

オセロをしていた二人が、同時に顔を上げ、声をかけてくる。

「はぐれましたか?」

生き方

…そう、みんな道に迷っただけでなく、人生にはぐれている。

そしてそのはぐれ具合を、初対面の内巻きさんと外巻きさんに、なぜか素直に打ち明けてしまう。

すると、掛け時計だと思っていたアンモナイトが動き出し、メッセージをくれるのだ。

呆気に取られていると、アンモナイトは勢いよく水がめの中に飛び込んむ。

すると水面に何かが見えるのだ。

それは蚊取り線香だったり、つむじだったり、巻きずしだったり、ト音記号だったり、花丸だったり、ソフトクリームだったり、全てうずまき状のなにか。

その渦巻き状のなにかが、真実を見つけるカギとなる。

たとえば…、巻きずしを作りながら、プロポーズされた彼女は気が付くのだ。

結婚しても二人で暮らすようになっても、それはやっぱり私の人生だ。誰かに属したり、所有するわけではない。だから、私はまずひとりでしっかり立とう。ちゃんと私が私を愛せるように。結びつきと独り立ち。結婚とはその両方だ!…と。

あるいはソフトクリーム屋の向かいの店で、おじいさんはマーちゃんに気づかされる。

「マーちゃんが俺のおかげと思ってくれるなら、俺の人生にも少しは生きた意味があったことになる。」

「違うよ、文太さん。何かを残すためじゃなくて、この一瞬一瞬を生きるために、私たちは生まれてきたんだよ。生きるために、生きるんだよ。」

ファンタジーの中に、メッセージがあり、キラリと光る言葉がある。

人生に迷った時に、ちょっとだけヒントをくれる案内所。

うちの近所にあればいいのに…。

人生のガイド

この記事を書いた人

Chikako

金沢市在住。バラとコーヒーとコーギーが好き。
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