夕方のドラッグストア、レジにはそこそこの列ができていた。
私が並んだのは、金髪のカップルの後ろ。
レジ担当は、多分私と同年代のおばちゃん。
金髪カップルがビールを購入したので、すかさずおばちゃんが、「確認ですけど、二十歳過ぎてますね?」と言った。
いや、どう見ても、30代でしょ?
金髪で革ジャンは、みんなティーンエイジャーではない。
おそらく美容系のお仕事なんじゃないかな。
思わずおばちゃんの顔を見てしまったら、なんとも茶目っ気のある表情をしている。
ああ、そうか、これはコンビニなどでの機械的な年齢確認とは違う、未成年ではないとわかっていて、わざと言ってるんだ。
つまりおばちゃんは会話のボールをぽ〜〜んと投げたのだ。
そして金髪のお兄ちゃんは、そのボールを受け取った。
「え?まさか?20代に見えます、俺?」
「学生さんじゃないの?」
「違いますよ〜〜☺️」
一緒にいたお姉ちゃんもクスクス笑い出した。
周りのお客さんたちもクスクス。
「これは失礼しました。10代だったらいけないと思って。」
お兄ちゃんは苦笑いしているが、マンザラでもなさそう。
「ありがとうございました〜〜。気をつけてね〜〜。」
明るい声に送られて、ニコニコしながら店を出て行く二人。
次の順番は私。
「若いっていいわね〜〜」と私に同意を求めるおばちゃん。
こんなボールを投げられて、むすっとしていられる人はいるだろうか。
思わず「私にも年齢確認してくださいよ」と返してしまった。
コミュ(コミュニケーション)力があるって、こういうことを言うのだろう。
日本人は、知らない人とは気軽に話さないし、あまり笑顔も見せない。
これがアメリカだと、すれ違う赤の他人に、笑顔でハローと挨拶する。
私たちとは違って多民族国家だから、言わなくても分かる…は通用しない。
言語も文化も違う相手に、敵意はないことを表明するためのハローだと言う人もいるが、気持ちのいい習慣だと思う。
私もワンコの散歩の時に、すれ違う人に「こんにちは」と挨拶していたが、大抵相手はギョッとする。日本には、そんな習慣がないのだから、まあ、びっくりするよね。
最近では、庭先を通る小学生にも気軽に声をかけられない。向こうが警戒するから。
下手に声をかけると防犯ブザーを鳴らされかねないし。なんだか殺伐とした世の中になってきたものだ。
だからレジのおばちゃんの気さくさに、心が和んだ。ほんわかした気持ちになったのは、金髪のカップルや私だけではなく、周りにいた人みんなだったと思う。
ほんの一言から、見ず知らず同士がの会話が始まり、一瞬ではあっても心を開いて、笑顔になる。
おばちゃんの周りは、常にこんな明るい空気が漂っているのだろうか。だとしたら、おばちゃんのご家族は、幸せだなあ。
羨ましいぜ、おばちゃん!