石川県と富山県の県境・倶利伽羅峠。
源平合戦の折、木曽義仲が牛の角に松明をくくりつけて、敵陣に放った逸話があるが、真偽のほどは定かではない。
その倶利伽羅峠にある不動寺の紫陽花を見に行ってきた。
倶利伽羅不動寺はふたつある
倶利伽羅不動寺の始まりは、約1300年前の養老2年(718年)。
歴史のあるお寺だ。
源平合戦の時と江戸末期、二度焼失している。
一度は廃寺になるが、50年後の1949年、別格本山が再興された。
当初は別格本山のみだったが、1998年に伽藍復興事業の一環として、西之坊鳳凰殿が再建される。
別格本山と西之坊鳳凰殿は、約6キロ離れている。
西之坊鳳凰殿はオープンエア
極楽浄土みたいな所があるから連れていってほしい…と母に頼まれたのは2年前の春。
そこが西之坊鳳凰殿だった。
極楽浄土は車で30分で行けるのか、案外手近だなぁ…と思った。
ちょうどフジとボタンとツツジが咲き乱れる季節だった。
今回は紫陽花の季節。
水色やピンクの紫陽花たちが、雨に濡れてしっとり咲いている光景を思い描いていた。
…が、意外にも、あじさいの畑!…みたいな感じ。
ほら、よくあるでしょ、京都や鎌倉のあじさい寺。
あんな艶っぽさを期待していたのに。
そして、SNSや新聞で紹介されていた手水鉢も、きれいはきれいだけれど、ちょっとしょぼかった…。
確かに映えるけどね。…思ったよりも小規模なのよ。
西之坊鳳凰殿は、だだっ広い運動場みたいにオープンな場所なので、鬱蒼と木々が茂り、昼間でもなお薄暗い、これぞ寺!…な雰囲気が薄い。
でも紫陽花はきれいだった。
別格本山は別の顔
せっかくここまで来たので、別格本山へも足を伸ばしてみる。
西之坊鳳凰殿から、歩いて行くのは、多分無理。
車で10分くらいかかる上に、細い山道をくねくねと登っていく。
一応舗装はしてあるが、なんでこんなアクセスが悪い場所に、わざわざ寺を建てるのかなと思う立地。
だが、行ってみて、納得した。
これよ、これ!
古刹はこうでなくっちゃ!
そして手水舎も!
紫陽花がびっしり。
駐車場にいる時から、チリンチリンと聞こえていた涼やかな音は、手水舎の風鈴だった。
風鈴の音と水の音、紫陽花を揺らす波紋、…ああ、乾いた心に染み入ってくる。
本堂横には五重塔。
富山と金沢方面が見渡せる絶景。
参道とは別の階段があったので、下りてみると…。(人がいない)
なんと、ここにも!
竜と紫陽花。
紫陽花はそこここに見かけたけれど、群生しているわけではない。
この色とりどりの紫陽花は、西之坊鳳凰殿から持ってきたのかな。
西之坊鳳凰殿が陽だとしたら、別格本山は陰。
陽のオープンで明るい雰囲気もいいが、私はひっそり佇む別格本山のほうが好き。
参道にミヤコワスレが咲いていて、モンシロチョウが舞っていた。
謎だったのは、倶利伽羅不動寺なのに、神社の看板。なぜ?