11年一緒に暮らしたニャンコが虹の橋を渡ってしまい、悲嘆にくれてさめざめと泣く君。
出会って間もない私の前で、鼻の頭を真っ赤にして涙をこぼす。
たかがネコ…とあしらわれるのが怖くて、ずっと大丈夫なふりをしていたけれど、本当は悲しくて悲しくてたまらなかった…と。
その悲しみをぐっと押さえつけていたら、ある日、めまいと頭痛で動けなくなった。
身体は本当に正直で、これ以上、苦しみをためこんだらパンクしちゃうよ…と教えてくれている。
なんとか乗り越えなくちゃ…と心療内科を探してみたけれど、2カ月先まで予約がいっぱい。
自治体の心の相談窓口に電話をしてみたら、新しい猫を飼うことを勧められた。
違う、そうじゃない、聞きたいのはそんなことじゃない!
君の苦しみをたまたま私が知り、私も愛犬を失くしたことがあるので、「気持ち、分かるよ」と言ったら、ギリギリの所で持ちこたえていたダムが決壊した。
あふれだす悲しみ、涙、後悔…。
君が欲しかったのは、立ち直るためのアドバイスじゃなかった。
ただ悲しいんだ…と、後悔しているんだ…と、可愛かったんだ…と誰かに話したかっただけ。
天涯孤独の君には、悲しみを共有できる家族がいなかった。
そしてこんな話、誰も聞きたくないだろうと遠慮して、友人にすら連絡していなかった。
でも友人は、きっと憤慨すると思うよ。
そんなに悲しい時にこそ、どうして連絡してくれなかったのかと。
そのニャンコは、神社に捨てられていた猫だった。
神社にはすでにたくさんの猫が飼われていたので、君が引き取ることにした。
宮司の奥さんと一緒に名前を考えていた時、たまたま参拝に来た外国の人のかっこいい名前をもらった。
それから君とニャンコは、ずっと一緒だった。
人生の苦しい局面を迎えた時、ニャンコはいつもそばにいて、君を支えてくれた。
大好きだった。愛おしかった。大切だった。
そんなニャンコが体調を崩し、君はかかりつけ医を変えた。
でも変えなかった方がよかったのではと、ずっと後悔している。
ニャンコが自力で登れなくなったビーズのソファを、無理してはい上らないように…と、撤去した。
でも気に入っていたのだから、撤去せずに、その都度、抱え上げてあげればよかった…と、君は悔やむ。
だけど、そんな後悔は無用だ。
君はその時できる最善を尽くしたのだし、ニャンコはそんなことを恨んでいない。
他の人に飼われていれば、死なずに済んだのでは…とまで言う。
そんなことはない。
君に飼われてニャンコは幸せだった。
こんなに愛されて。こんなに大切に思われて。こんなに惜しまれて。
拾われた時はすでに大人だったから、ニャンコの正確な年齢は分からないが、もう寿命だったのかもしれない。
ニャンコの死は、君のせいじゃない。
君はいっぱい可愛がった。精一杯愛情を注いだ。大切に愛おしんだ。
それが全てじゃないか?
ニャンコの写真を見せてもらったら、捨て猫だったとは信じられないほど、美しい猫だった。
艶々の毛並みに満足しきった表情。
君のそばで心底リラックスしている。
どこからどう見ても幸せな猫じゃないか!
二人で声に出して言ってみた。
「〇〇は幸せな猫だった。」
口に出すそばから、君の瞳に涙がこみ上げる。
「〇〇は幸せな猫だった。」
そうだよ、泣いていいんだよ。
ああ、私はこんなに悲しいんだ…と認めていいんだよ。
そして気づいてね、こんなに悲しいのは、君がいっぱいいっぱい愛したからなんだよ。
きっとニャンコは今、天国から見下ろして、「そんなに泣かないで~~」と、大好きな君のことを心配していると思うよ。