目の前に苦しい現実が展開し、自分の無力さに凹み、途方に暮れる時、なにをすればいいか知っている。
現実を変える手立てすら思い浮かばない…、そんな時。
私は家を片づけて、掃除する。
泣きたい気持ちを奮い立たせ、ただただ家をきれいにする。
いつの間にか家に入り込んだモノや、増えたモノや、不要になったモノを捨て、汚れや埃や曇りを取り除いていく。
現実逃避?
そうかもしれない。
でも、断捨離で教えてもらった…、全ては相似形だと。
現実がグシャグシャな時は、たいてい家の中もグシャグシャだ。
今はそれどころではない。
問題を解決しなければならないのに、片づけや掃除をする余裕なんてない!
確かに心身ともに疲れ切っていれば、家の中のことは後回しになるだろう。
でも実際にできることがないわけだから…。
私はせめて相似形の一部を調えようと思う。
たとえ全然関係ないことのように見えても。
そうやって家が調えば、気持ちも少しは晴れる。
どよんと重く沈んだ頭には浮かばなかったアイディアも、ひらめくかもしれない。
そしてなにより、整った場所に居る時、人の心は調いやすい。
暗い面ばかり見て、ため息を連発し、不安に押しつぶされそうになっていても、少しは頭を上げようかな、もうちょっと頑張ってみようかな、ここまで落ちれば、後は上がるしかないよ…と、わずかな光が見えてくる。
とても不思議なことだけれど、場のエネルギーが調うと、千々に乱れて吹っ飛んでいた心が戻ってくるのだ。
ただテーブルの上に何もないだけで、ただ冷蔵庫の中が整然としているだけで、ただ床が光っているだけで、またお腹の底から勇気がわいてくるような気がする。
現実面でできることは、全部した…。
けれど坂を転がり落ちるように、負の連鎖は続く。
とてつもない焦りと不安。
日曜日だから、一日ゴロゴロ寝ていることもできるけれど…。
そんな風に過ごしても気は晴れないし、疲れも取れないことは分かっている。
あまり気負わず、冷蔵庫の掃除をしてみた。
冷蔵庫は、私にとってはバロメーターみたいなものだから。
何かあると、いつも冷蔵庫を片づけるな、私は。
先週1週間の混乱ぶりを、如実に示す庫内。
食欲がないから…と、ろくに食べていなかったけれど、これではいけない。
ちゃんと料理して、ちゃんと食べないと。
そのためには、食材管理をしっかりしないと。
もう食べたくない食品を抜き出し、外せる部品は、全部、取り外して洗った。
冷凍庫もぬかりなく。
やたらとビールが多いのは、お中元をいただいたこともあるが、酒で忘れたい気持ちの表れかもしれない。
きれいになった冷蔵庫に、食べるつもりの食品を戻した。
よし、これで何があるのか、全部把握できた。
何を買い足せばいいのかも、すぐ分かるし、献立も立てやすい。
お腹に優しいスープでも作ろうかな。
…ほら、もう料理しようという気持ちになっている。
その前に、キッチンも磨いて、明日からの1週間に備えよう。