1篇が15ページほど。
無理なく一気に読める24の短編からなる物語。
それぞれのエピソードにそれぞれの主人公がいて、それぞれの人生と格闘している。
恋に悩み、仕事に迷い、人間関係に疲れ…。
描かれるのは挫折、嫉妬、孤独、誤解、後悔、…そして一筋の希望。
どこにでもありそうな、誰にでも起こりそうなエピソードが紡がれる。
大どんでん返しも息をのむような展開もない。
ただ淡々と日々の暮らしが流れていく。
だがそれぞれにとって、その平凡極まりない暮らしの中で起こる、小さな事件や些細な出来事は、大きなきっかけになったりする。
「独立記念日」とは、進学や就職や結婚で家を離れる…といった類のことではない。
もちろん宇宙からの侵略者と戦う話でもない。
経済的自立がテーマではなく、閉塞感いっぱいの現状から、いかに次のステージへ歩を進めるか…というチャレンジのお話。
日々の暮らしに疲れていても、どうせ人生こんなもん…と諦めてやり過ごすのではなく、なれる最高の自分に近づくために、今できることを、少しでもやってみる…、そんな健気で勇気ある人々のお話。
「独立記念日」というタイトルのエピソードがあるが、小鳥を逃がしてしまった親子が、保護してくれた作家の家を訪ねてくる。
シングルマザーで、周囲のママ友たちに溶け込めず、孤立している母親に、作家は自分の著作「独立記念日」を渡して言う。
『ひと言で言うと、会社とか家族とか恋愛とか、現代社会の様々な呪縛から逃れて自由になる人々が主人公の短編集です。』
そう、その通り。
独立するとは、自由を得るということ。
これは自由へ向かって、果敢に踏み出す女性たちの物語。
現状が変わらなくても、その捉え方を変え、意識の変容を現実の変容へ結びつけていこうとする、勇気ある女性たちの物語。
だから、クライマックス的要素がなくても、十分に共感できるし、十分に励まされる。
主人公とかかわる端役の人が、次のエピソードの主役になる構成も、とても楽しい。
普通の人々が、普通の暮らしの中で、小さなチャレンジに立ち向かう。
こんな物語を、私もいつか書いてみたい…。
小さなチャレンジを前に、足踏みしている人の背中を、そっと優しく押してくれる、そんな物語を…。