船戸博子先生の夏の養生講座・気血水の〈水〉と腎虚について

石川県加賀市で開催されている船戸博子先生の養生コース、本当は5回で完結のはずだったが、気・血・水をしっかり説明したいから…と、1回増えた。

6回目の最終回は、残暑厳しい9月初めの日曜日、土田歯科医院のはなみずきルームにて。

いつもの面々とはじめましての数人が、ウキウキ・ワクワクした表情で集まった。

いくつになっても学ぶことって楽しいね…と、みんなの顔に太文字で書いてある。

講師紹介→博子先生はこんな人

気・血・水の〈水〉

今回のテーマは、気・血・水の〈水〉。

気・血・水は人体を構成する三大要素。五臓で生成されて、全身をめぐる。

気と血と水は、相互に作用しあって、健康の物差しとなる。

人体の構成要素

漢方における〈水〉とは、血液以外の水分のこと。

身体に潤いと循環をもたらす。

身体に不調和があると、〈水〉は外に出てくる。

肝臓の場合は涙、心臓は汗、胃は涎、肺は鼻水、腎臓は唾液として。

〈水〉に焦点を当てた体質は、陰虚と水滞のふたつに分類される。

✵ 陰虚

ひと言でいうと、陰虚は体内の水不足。

寝汗をよくかく、のど・口・目が乾きやすい、秋の乾燥に弱い、乾いた咳がでる、肌が乾燥している、頭がのぼせ、身体がほてりやすい、痩せ型で食べても太りにくい、便秘がちである…、こういう特徴がある人は、陰虚の可能性が高い。

陰虚の人は、しっかり食事をすること、水分をこまめに摂ること、汗をかきすぎないこと。

食養生としては、酸っぱい物、甘い物、粘り気のある物、白い物がおすすめ。

積極的に摂りたい食材は、山芋、レンコン、白キクラゲ、おくら、ゆりね、アーモンド、松の実、落花生、銀杏、梨、イチジク、桑の実、バナナ、びわ、ヤマモモ、みかん、はちみつ、白魚、鰻、おこぜ、牡蠣、ふぐ、合鴨など。

✵ 水滞

陰虚の逆で、体内の水分が過剰。

特徴は、雨の日に調子が悪くなる、顔や足がむくむ、乗り物酔いしやすい、水を飲むとみぞおちがポチャポチャいう、水っぽい鼻水や痰がよく出る、めまいが起こりやすい、尿の量が不安定、舌が大きく、歯の跡がついている等。

水滞の人は、たいてい気の力が弱い気虚とワンセットで、低気圧にやられやすい。

水が溜まらないように注意するとよい。

塩分を減らし、食べ過ぎを控え、軽い運動を心がける。

お勧めは下半身浴。(じっくりじんわり汗をかく)

食事は全体食にする。(丸ごとのりんご、皮付きの大根など)

積極的に摂りたい食材は、玄米、大麦、ハトムギ、小豆と黒豆(ゆで汁)、緑豆、枝豆、そら豆、よもぎ、さやいんげん、金針菜、グリーンピース、胡瓜、キャベツ、大根、なす、すべりゆり、大豆もやし、ユウガオ、トウモロコシのひげ、エリンギ、えのき、すいか、マクワウリ、すもも、ぶどう、メロン、はも、鮎、鯖、スズキ、はた、ふぐ、アサリ、昆布、あおさ、緑茶、プーアール茶、烏龍茶、紅茶、コーヒーなど。

船戸博子先生

腎虚について

気・血・水のお話が終わった。

さあ、お弁当💕…と思いきや、「ここからが本番よ」と博子先生。

〈腎虚〉という耳慣れないワードが出てきた。

字から推察すると、それは腎臓の虚弱?

博子先生は、精のエネルギーについて語り始める。

私たちは、先天の気を持って生まれてくる。

それはお母さん、しいては脈々と続く祖先から受け継いできたもの。

いうなればご先祖様からのギフトだ。

だが先天の気は、赤ちゃんの時がマックスで、だんだんと減ってくる。

減ったエネルギーは、なにかで補わなければならない。

それが後天の気。

後天の気は、食べ物と呼吸から取り入れることができる。

この気がいわゆる〈精〉で、腎に蓄えられる。

精のエネルギーが不足する状態を、腎虚と呼ぶ。

精のエネルギー参加者のほとんどが更年期中か閉経を迎えた女性たち。

博子先生が腎虚の説明に時間をかけたのは、このグループには絶対に役立つ!…と確信しておられたからだろう。

精のエネルギーを活性化させることは、アンチエイジングに直結する。

私たちには朗報以外のなにものでもない。

腎虚の特徴は、基礎体温のリズムが不安定、排卵しない月がある、肌が乾燥しやすい、抜け毛・白髪が増え、髪のコシが弱くなる、足腰がだるく、腰痛になりやすい、夜間頻尿、尿が出づらい、性欲減退、視力の低下、耳鳴り・めまい、歯茎が下がり、歯が長く見えるなど。

また老化とともに現れる困った症状は、二門の開き。

二門が開くと、二便が漏れる。

つまり肛門が緩くなったり、尿漏れが起きたりする。

私は毎日、高齢者と接しているが、この悩みを持たない人はほとんどいない。

腎虚の対策として、下半身の運動を心がけること、下半身を冷やさないこと。

食養生のお勧めは、黒い食べ物、硬い殻に包まれている物、発酵した物。

お勧めは、もち米、黒豆、根菜類、納豆、黒きくらげ、ひじき、ブロッコリー、黒ゴマ、にら、芋、くるみ、栗、松の実、えび、牡蠣、なまこ、あわび、はまぐり、アサリ、ホタテ、鹿肉、ウズラの卵、クコ茶、黒豆茶。

食べることと呼吸することで、身体にエネルギーを入れていこう。

ちなみに呼吸と食事では、呼吸のほうがエネルギー値は高い。

呼吸は4分止めただけで死んでしまうけれど、食事は1ヵ月くらい抜いても死にはしない。(弱るけど)

博子先生は、呼吸は”生きていていいよ”という神仏からのギフトだと言う。

もちろん食事も大切だ。

たとえば赤血球は4ヵ月で入れ替わる。

血液系の病気の人は、4ヵ月徹底的に食にこだわれば、高確率で快方に向かう。

だが私たちは誘惑に弱いので、つい欲望のままに食べてしまう。😅

生きるとは、私と向き合うことだよ…と、博子先生が諭す。

精神と感情が、〈私らしさ〉を作っている。

精神と感情は臓器に宿るので、〈私らしさ〉も臓器に宿る。

伝統医学は、いかに私らしく生き、私らしく死ぬかに焦点を当てる。

〈私らしく〉とは、方々で耳にするワードではあるが、それはいったいどういう意味なのか、具体的にはどういう状態を指すのか、考えてみたことはあるだろうか。

〈私〉が〈私らしく〉生きて、死ぬ。

人生とは案外とてもシンプルなのかもしれない。

夏の養生弁当

さあ、今度こそ、お弁当💕

フナクリ食堂の西村祐子シェフが腕によりをかけたお弁当が配られる。

…と、お弁当の蓋の上には、でっかいイチジクの葉っぱ。

乾燥させてお茶にしてください…とのこと。

フナクリ食堂

葉っぱをめくると……。

船戸博子先生

鮮やかな夏色が飛び出してきた!

なんて綺麗!

メニューは、夏野菜とエビのカレー炒め、タンドリーチキン、ラムのドライカレー、ターメリックライス、ハーブヨーグルトドレッシングのサラダ、タコのマリネ、ナツメと杏etc.

スパイシーな香りが鼻孔をくすぐる~~。

スープは、カボチャとココナツのポタージュ、バジルのスティック添え。

フナクリ食堂

デザートは、緑豆のぜんざい。塩寒天と桃膠とともに。(ごめん、写真取り忘れた💦)

例のごとく、がっつく私たちを尻目に、博子先生と西村シェフはさっさと撤収していった。

疾風のように…という言葉は、この二人のためにあるのかもしれないね。

参加者の感想

食後、主催者の提案で参加者が一言ずつ感想を述べた。

* 折り返し年齢を過ぎた。これからはもっとラクに生きたい。

* 私らしく生きるというテーマに深く共感した。博子先生とのご縁に感謝。

* 閉経時期で身体が変わってきている。自分でも戸惑っていて、こんな話をもっと聞きたい。身体が4ヵ月で変わるなら、学んだことを生活に取り入れて向き合っていきたい。

* 人と比較せず、私は私でよい。病気をしても、私でよいという気持ちで生きていきたい。

* 体調、生活や気持ちの変化がいろいろある。どう対処したらいいのかのヒントを得られた。たった1回の講義でこれだけのことを学べるのなら、6回出ていたら、大きく変われたのになぁ。

* 病み上がりの夫と老齢の犬がこの暑さで夏バテした。水の話をヒントに、対処してみたい。子どもたち、孫たち、自分が死んだ後のこと、じっくり考えてみようと思った。

* 不規則でいい加減な生活をしているが、講座に出ることでリセットできるかな。😛 ここではなるほど~~と思っていても、家に帰ると忘れてしまうことが多いから、集まる機会は大切。

* 食事が美味しい💕もっとお話が聞きたい。

* 漢方や養生の話は、難しい。全然分からないけれど、理解しようとしなくてもいいんだろうと思う。心のどこかに引っかかっていれば、それでいいのかな。

* ずっと仕事でモヤモヤをためてきたが、転職することが決まった。これから自分らしく生きようと、希望でいっぱい。市販薬にかかわる仕事なので、漢方の勉強もしたい。

* 私らしく生きてきたつもりだけれど、もっともっと私らしくいこう。病気って怖くないんだな。

* 娘と6回参加した。食生活や生活習慣について親が言っても聞かないが、博子先生の言うことなら素直に聞いてくれるから嬉しい。くよくよする自分も、怒る自分も、悦ぶ自分も、全部自分、それでいいんだなと思った。

* みなさん温かかった。

* 医療関係で働いているが、普段は患者さんを死なせないこと、病気を治すことに集中している。漢方は、病気になっても死ぬことが前提。それはそれでいいと。食事や精神面から行う医療は、とても新鮮。

* 毎日、高齢者と接して、人が老いる過程をつぶさに見ている。よりよく生きて、自分らしく死ぬ。まん丸の魂で死ぬ。102歳の姑や88歳の母は無理かもしれないけれど、私は実践できたらいいな。

* 初めて博子先生にお会いした時、医療者としての在り方に迷っていた。やりたいことがはっきり分からないということが分かっていれば、それでよかったんだと、今なら思う。博子先生は、なにがやりたいのかを自分に問いかけ、自分の立ち位置を忘れない姿勢をいつも見せてくれる。

* 先生はなにがしたいのかと聞いたことがある。「笑顔で死にたい。笑顔で死ぬ人を、この世の中に増やしたい」と仰った。今日のみなさんのコメントを聞いて、それが伝わったんだ…と感じて嬉しい。

* 楽しかった。暗い話もあったが、それをシェアできる仲間がいることが、これからの励み。自分らしくを追求すると、沼にはまりがち。全部が整った状態で、自分らしく残りの人生に向き合っていこう。
「先生は、どこを目指してるんですか?」と聞いたら、「今のこの状態」と言われ、まずは丸ごと自分を認めることが大切なんだなと思った。

船戸博子先生

以上、船戸博子先生の漢方養生講座全6回は、これにて終了です。お付き合いいただき、ありがとうございました。

船戸クリニックHP

↓博子先生の著書・おくすりなごはんが出版されました。↓

→ 第1回 土用の養生講座(欠席) *別の機会に聞いた土用の養生について

→ 第2回 秋の薬膳講座

→ 第3回 冬の薬膳講座

→ 第4回 春の養生講座・〈気〉

→ 第5回 梅雨の養生講座・〈血〉(未完)

この記事を書いた人

Chikako

金沢市在住。バラとコーヒーとコーギーが好き。
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