ピアノを手放すにあたって、ピアノとの関わりを振り返っています。
さてさてさて、ピアノは今の私にとって、もう”要”ではないと自覚したものの、手放せない・・・という想いは、しぶとく居座ります。
実はこの【手放せない】がくせ者でして。
手放せないのではないのです。
だって処分するだけの話ですから。
手放せないのではなく、手放したくないというのが本当のところ。
これはピアノに限らず、服でも、バッグでも、食器でも、本でも、子どもの作品でも、同じこと。
本当は捨てたくないから、【捨てられない】とさも処分する能力がないかのように言うのです。
向き合うべきは、どうして捨てたくないのか、そこですね。
私の場合は執着ですが、もうひとつは、大きすぎて処分の手間がかかるというもの。
自分では運び出すことさえ、できません。
ピアノ売ってちょ~~うだい♪・・・とさも簡単そうに呼びかけてきますが、本当に電話一本なの?
そうやってグズグズグズグズ引き延ばしてきましたが、2020年、私は様々なトラブルに見舞われます。
自分で解決できないことや、自分の手に余ること、さらには私は関係ないのに巻き込まれちゃったことなど、ストレスフルな日々に気が休まる暇がありません。
夜は眠れず、食欲も落ち、いつも胃が痛くて、5キロ痩せました。
・・・あかんなぁ。
そんな時、昔の同志に会う機会がありました。
「どっか詰まってるんじゃない?」
その一言で心が決まりました。
詰まっているとしたら、アレしかない・・・って、もう分かっていましたから。
部分即全体。全ては相似形。
家の中の詰まりが、しいては人生の詰まりとなる。
ピアノを断捨離したところで、現実がどうなるかなんて、誰にも分かりません。
でも他にできることがないのであれば・・・。
現役時代に、なんで決心できなかったんだろう、アタシ。
それからはスピーディでした。
その日のうちにネット検索して、5社に査定を依頼。
状態はいいとは言え、50年以上経ったピアノなので、999円という査定もありました。
どこに引き取られても、ピアノの行き先はほぼ同じで、再調整されて、寄付されるか、途上国へ向かうか。
27000円という値をつけてくれた業者さんに、お願いすることにしました。
ネットで依頼すると、すぐ電話がかかってきて、引き取りの日時を相談。
お隣福井県の運送会社が、取りに来てくれることになりました。
当日。
心を込めてピアノを磨きました。
縁は薄れたとはいえ、このピアノが私を支えてくれていた日々は確かにあったのです。
ありがとうね。
ありがとうね。
ありがとうね。
運送会社の方が2名やってきて、まず外せる部品を外しました。
外側は傷もあって、足部分の塗装も剥がれているけれど、内部はとてもきれいな状態。
たくさん弾いたのに、ハンマーもへたっていません。
肩に帯をかけて、ピアノを運び出します。
重いだろうなぁ。腰にかかる負担は相当なものだと思います。
ああ、行ってしまう・・・。
運送会社の人が到着してから、トラックが去るまで、15分くらいだったでしょうか。
あまりにもあっけなく、ピアノは旅立っていきました。
残された私が何を感じていたかというと・・・、意外にも全然平気でした。
もう関係性が終わったことをしっかり自覚し、手放す覚悟ができた時点で、ピアノはただのモノになりました。
大きさやサイズは違えど、片っぽになった靴下や賞味期限の切れた豆腐と同じです。
もっと喪失感があるのかなと思っていたので、ちょっと拍子抜けしました。
ずっとずっとずっと、ピアノだけは手放せない・・・と頑なに思い続けてきたのは、なぜだったのか。
今となっては、不思議です。
前職を辞めた時にも思いました。
この世の中に、手放せないモノなどないのだと・・・。
ピアノがなくなって、ぽっかり空いた空間。
その空間が愛おしい。
ずっとピアノの下になっていた床に、25年ぶりに陽が当たりました。
ピアノが出て行ったからといって、私の現実ががらりと変わるわけではありません。
でも確かに何かが動きました。
見えない何かが、ゴロリと音を立てて動きました。
この話を聞いた友人は、「また弾きたくなったら、その時、新しいピアノを迎えればいい」と言いました。
その通りだね。
手放してみて、初めて分かることもあるでしょう。
ゴロリと動いた何かは、動き続けるのか、そのまま止まるのか、・・・そんなこと分かりません。
分かる必要もないのです。
でも私は今、悲しくないし、むしろ晴々とすらしています。
ピアノの断捨離は、秘密裏に進めました。
帰宅した夫は、がらんとした空間を見て、目をぱちくり。
私が「断捨離するする」と言いながら、結局できないと思っていたようで、「見直したよ」だって。(^_^)v
するする詐欺師の汚名は、めでたく返上です。
ピアノの断捨離シリーズ、終わります。
長々と読んでくださって、ありがとうございます。